ウイズダムマネジメント

明日を考える経営

- 経営者・幹部へのアドバイス No.24 -

コア・コンピタンスの経営

 企業の発展は、その企業が目指してきたコア・コンピタンスを貫き通すことによって獲得されていきます。
 
 ソニー(SONY,東京通信工業(株))は、周知のように国産テープレコーダーを作ることに成功しました。それは重さが45Kg、値段は16万円もし、買い手が見つからず、やっと国会、裁判所の速記記録の補助に使われたというエピソードがあります。

 そのテープレコーダーは、世界中に流行らせたウオークマンという再生オンリーの超小型テープレコーダーに結実しました。そのサイズは、390gでした。
創業者の井深 大(まさる)社長は、開発者が試作品を持参すると、必ず「もっと小さくできないか」と言ったそうです。より小さくするというのはソニーのコア・コンピタンスになりました。

 このコア・コンピタンスを外すと、世界を風靡したウオークマンの首位をアップル社のipodに明け渡すことにもなるのです。
この超小型の製品の単価は1〜3万円かもしれませんが、顧客の裾野は広いのです。裾野の広さは、ソニーの未来の顧客を創るはずで
あったのです。  
 企業は、コア・コンピタンスに一点集中主義で全力を注ぎます。
コア・コンピタンスが製品・サービスでも、流通業でも同じです。一点集中により、その販売シエア(占有率)が限定された地域でNO.1になるようにします。あるいは、納入顧客でのシエアNO.1を獲得するのです。
やがて、その製品・サービス、または販売シエアがNO.1になります。

 例として、安全弁メーカー専業の福井製作所は、元舶用バルブメーカーでしたが昭和30年代に規格バルブの製造から安全弁の生産を選択したのです。これは経営者の英断でした。、工場は大阪市今里にありましたが、身に不相応な設備はタクマ製50kg圧の蒸気試験装置でした。高さは3階ビルに相当し、工場の屋根を突き抜けて蒸気試験場が立てられていました。

 経営者がいかに安全弁というニッチ分野の製品開発に命を賭けていたことが分かります。
 競合する先発メーカーがありましたが、同社は、一点集中主義で安全弁技術を集積していきました。そして、販路を海外に求めるために、米国の国家庁のASME品質保証規格の取得に挑戦し、日本の安全弁・メーカーでは、初めて工場サーベイに合格したのです。
 昭和51年当時は国際規格ISO9001品質マネジメント・システムもない時代です。ASME品質保証規格は製品の性能検査を伴う厳しい品質検査がありますが、これをクリアしたのです。同社は、今日もASME規格認証とISO9001国際規格の双方の認証を維持しています。

 福井製作所は、このASMEを武器に石油化学・石油精製・蒸気発電プラント用の安全弁の直接・間接受注を重ねて、ついに世界のFUKUIとして製品安全弁のシエアNO.1を占めるに至ったのです。
(福井製作所は私が28年間勤務し、品質管理とマネジメントを学び、恩恵を受けた会社で、同社で働き体験できたことを誇りとしています)

 この事例のように、企業のコア・コンピタンスは、磨かれて品質・コスト・納期で、他社との差別化は、より鮮明になってきます。
そのコア・コンピタンスは顧客に対して、誘因力となり、顧客を引きつけるようになります。
このようにコア・コンピタンスが顧客価値の創造を成した時に、企業には競争力が付いたのです。

 企業は、自社のコア・コンピタンスは何かを忘れずに、全社員が新技術・新製品・新商品・新サービスにイノベーション(革新)を重ねていくときに、製品・サービス・商品はNO.1シエアを獲得できるのです。

 企業の「コア・コンピタンス経営とは何か」、まとめると次の4つの項目になります。
 その結実・結果として利益は後から付いてきます。そして、キャッシュ・フローは最大となり、プラスの流れが定まります。
(2006.12.25 長谷川好宏)
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