明日を考える経営

- 経営者・幹部へのアドバイス No.8 -

Fish !〔魚屋さん!〕
 仕事を楽しんでいますか


 今、世界の事業家や店のオーナーから熱い視線がシアトルの魚屋さんに注がれています。
仕事を楽しくすることができれば、働く人たちも生き生きとしてくる。
この事実をワシントン州のシアトルの港に近い所にある「パイク・プレイス魚市場」の店員たちは実践している。

 日本の魚屋と変わらない元気な声が飛び交わっているが、彼らはお客様を楽しませるパフォーマンスに一所懸命なのだ。
店には氷を砕いた斜めになった台上に魚やカニ、桜貝が綺麗に並べてある。

 店の前を通りかかった人に「いらっしゃい!」と注意を引く声をかける。
通行人が顔を向けると、口を開けた大きな魚がパクパクと口を動かし、飛びかかって来る。びっくりする
もちろん生きているはずがない、店員が手じかけであたかも生きているように動かすのである。

 貝の注文をもらうと、ポリ袋に貝をすくって入れ、
「からす貝! モンタナ行き!」と店員が叫び、中のカウンターに向かって投げる
カウンターからはフィッシュキャッチの名人ジャスティンさんが
「からす貝、モンタナ行き!」と復唱し、飛んでくる貝の入った袋をつかむ
 これが、魚になると、猛烈な勢いで魚を水平に投げるのだ。
ストライクボールのように、カウンターのキャッチャー名人が用意した包み紙毎に見事に受け取るのである。
すべて復唱し、投げてくる数を間違いなくキャッチする。
 
これを見て、お客様の中から一人の婦人が
「私にキャッチさせて!」 とカウンターに入ってくる。
キャッチャー名人がエプロンを婦人につけてやると開始。
婦人は包み紙を持って身構えた瞬間にロケット弾のように魚がストレートで飛んでくる。
婦人の包み紙をはね飛ばして床にころがる。
これが2回つづき、キャッチャーに失敗すると、すかさず、「退場!」と店員の誰からか声が飛んでくる。

 店のパフォーマンスは店員もお客も一緒になって行っているのである。
魚の切り身を試食していた人たちも笑い転げて、魚を買って帰るという寸法である。
「カニ2杯!」 活きよいよく大きなカニ1匹が空中をカウンターに向かって飛ぶ、「カニ2杯」とカウンターから復唱があって、見事に連続してキャッチする。

 魚さばきの名人サニーさんはカウンター内で、魚の腹わたを除く、それを受け取って包む店員は魚に人工呼吸をほどこすといったパフォーマンス。

 店のオーナーのジョンさんは、東洋人系の顔立ちである。
彼は昔、店員にも嫌がられる小うるさい親父であったが、仕事の中に遊びを取り入れて成功した。
彼は言う、「エネルギー、情熱、楽しさ」この3つが大事だと。
 
 そして、店の哲学(理念)は、次の4つである。
  1. 仕事を楽しむ

  2. お客様を楽しませる

  3. お客様に向き合う

  4. 態度を選ぶ
  お買いあげ頂いた商品の魚を投げるのは不謹慎のようであるが、魚は自分たちの副次的な物で、お客様と対面することが大事なのである。

 Fishの2つ目の哲学は、「お客さまを楽しませること」。
たとえお客さまが魚を買わなくてもよい。
お客さまの気持ちを楽しくさせるのが仕事である。
店員のデックさんは全員でより良いサービスを提供しているという。

 3つ目の哲学は「お客に向き合う」である。
お客様と積極的に向き合い会話をする。
通りがかりのお客様をしっかり見る、決して無視しない。
たとえ、電話でも、応対でもきちんと向き合う。

 4つ目の哲学は、「態度を選ぶ」である。
これは店員の姿勢、心構えである。
「朝、起きたら今日一日、どんな一日にするか」考える。
たとえ、気分がすぐれなくても自分で態度を選ぶのである。 

 こうして、パイプ・プレイス魚市場は、お客様がわざわざ買いに来るので、今日も一日が賑わい、店員の創意工夫のパフォーマンスが笑いを起こすのである。
6時前に起きる仕事は、魚を冷やす氷が冷たいし、仕事もきつい。
しかし、魚屋の店員になりたい若者が大勢待機している。

ここには、組織活性化のヒントが一杯なのである。Fish!
(2004.4.19 長谷川好宏)
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