- 5Sはすべての仕事の原点です。しかし、右図のように、5Sすることが目標ではないのです。
- なぜ、5Sをするのか、その目的は、生産現場から失われている利益を取り戻すためです。 このための目標は下図のように「ムダ取り」です。
- T社のシャーリング工場は鋼板を鋼種別厚み別に見た目にきれいに整理していました。
5S導入後、切断頻度を調べて、多い順に機械側に並べ替えをし、走行クレーンの運搬距離
と時間を削減しました。
さらに、顧客の注文サイズに切断し束ねた鋼材をその都度、走行クレーンで出荷コーナーに運搬していたのです。
3図のようなコンテナボックスを作り、切断束で一杯になったところで運搬し、回数を大幅に減らしたのです。
- 5Sは4Sプラス心(躾)から成り、4図のように4Sというプロセス活動と心では次元が異なります。5Sとして一緒に扱っていては、5Sを習慣化できずに失敗してしまうのです。
単に、4Sをするだけではムダ取りはできません。心がこもった4Sが行われるとき、4Sというプロセスの活動に意味が生じ、その成果に感動が生まれます。また、4Sのプロセス活動を通して、心が養われて喜びが生まれ、その心がムダ取りの改善を生み出す動機づけになるのです。それは、お客様に喜ばれる物づくりの心とも言えます。
- 人の心は一晩で養われるものではありません。自らを躾る決意、チームとして躾る合意が必要です。躾は4Sをするための行儀作法です。賢い幼児の母が玄関に子供達の靴型を描いたら、それに合わせて楽しんで子供達が靴を揃えるようになった話があります。このように自らを躾るために知恵と工夫と辛抱強さが必要です。
- 経営トップまたは、事業所責任者は「なんのために5Sをするのか」ということを現場のあるべき理想像とあわせて明確にします。即ち、ムダ取りにより、利益の流出を止血し、付加価値を生むのが最終目標です。
- 「ムダ取り」が目標ですから、工具を整理するのは探す時間や戻す時間を短縮するためであること、床をきれいにすること、機械を清掃すること、作業服を清潔にすること等は、どんな付加価値を生むのかを明確にします。
さらに、目標値を限度見本で示す必要がありますし、チームまたはメンバーに範囲を割り当て、自分の目標が明示されなければ行動に移れません。
油とほこりでコテコテになった機械は、限度見本として20〜30cmの範囲を元の塗装肌が現れるまで汚れを除きます。これが機械全体の目標値になります。
- A社工場責任者は右図のように建物内の内壁の棚や物品、機械を移動させ、通路を内壁側に変更しました。しかも、来客の見学通路にしたのです。
これにより四隅に不要品が放置されたり、機械の裏に切粉やゴミが貯まっていたのがすべて除去され、工場全体の不要品を除くことができました。チームやメンバーは目標が明確にされたとき、行動し、考え始めるのです。
誰にでもムダが見えるようにすることがムダ取りのポイントです。 工場を診断・視察する場合は、この視点で徹底して指摘します。
- 材料・半製品・物品に表示がない >> 表示、また看板を付ける
- 治工具・工具が床に放置されている >> 所定の置き場と工具の表示
- 測定具が乱雑に使い放しになっている >> ゴムパッドの上に置く
- 通路や物品置き場に区画線がない >> 白線、黄線を引かせる
- 区画線の表示よりハミ出したり、またがって物品が置かれている >> 整頓
- パレット置場・フォークリフト駐車場・梱包資材置場に区画表示、看板がない >> 表示
- 棚に不明な部品が置かれている >> 表示
- 軍手の使い捨てがあちこちに点在 >> 軍手入れ箱(やや汚れ・汚れ中・破棄の3区分)
- 吊り具の放置 >> 吊り具掛けの製作
- 油モレ、切削水の水たまり >> 源から防止
- 切粉が飛散し、受けがない >> 飛散防止ガードと受箱をつくる
- 材料・半製品・物品・通い箱などを床に直置き >> パレット、台車に
- 棚やパレット上の物品が乱雑で落下の恐れ
- 清掃用具の放置 >> 整頓、置き場と表示
以上のように細かい点は他にも出てきます。この状態が常態化しますと異常が起きても気付かないし、在庫のムダ・運搬のムダ・不良のムダ・動作のムダなどが発生してもわかりません。すべて目で見てわかるようにします。 |