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- 経営者・幹部へのアドバイス No.9 - | ||
有能人材の定着化をはかる |
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ある印刷会社は商業広告印刷分野で特殊技術を確立された。 その特殊印刷技術に、たけておられる経営者から「人材を定着化させるためには、どのようにすればよいか」という質問をお受けした。 他社にない印刷技術を自社で確立するために創意工夫を重ねられてきたことが新商品という形で顧客から注目を受けている。 この企業の何より大きなことは社長の意向を理解し、ともに仕事をし、創意工夫の努力してきた社員の人たちである。 経営者は、この社員たちへの処遇について、同業一般よりも考慮されている。 若手社員たちは、印刷知識や専門技能について知らなかった人たちであるが、5年〜7年と経過してくると、技能もマスターし、他社の情報も入ってくると「自分の人生には、もっと他に活かせることがあるのでは?」とよけいなことを考えるようになる。 さて、人の定着化について「給料・賞与を増やして待遇を改善すればよい」と考えている経営者もあるかもしれないが、ハーズバーグという学者が「動機づけ・衛生理論」という実証を立てた。 この理論は社員が、給与や職務環境に不満があるとき、給与が増え、環境が改善されると不満は解消するが、仕事をさらに良くしていこうという動機づけにはつながらないと説いた。 ということは、他所の会社より給料が低いときは不満を持つが、給料が増え、他所より高くなると不満は解消するが、その分、より多く仕事をすることにはつながらないのである。 ハーズバーグによれば、働く人が動機づけられて自ら起きあがり、仕事にやり甲斐を感じるのは、
これからの中小企業は、大企業と違って、その職場が自分のやり甲斐に結びつき、仕事そのものが楽しく、自己の創意工夫をだせるなら、若い人たちは喜んで働くであろう。
「ザ・リッツ・カールトン大阪」ホテルは、独自の企業文化を生み出している。 このホテルで働く社員は
そのことにより、お客様に喜んでいただき、再び来て頂くことの喜びを共有し、自分の創意工夫によって、サービスがより向上していくことをやり甲斐にしている。 このホテルの社員にとって、紳士淑女のお客様をお迎えする前に、自分たちも紳士淑女であろうと努力し、ここの職場が自分を動機づけ、自分の賜物を発揮できる最高の働きの場、喜びの場であるのである。 経営者の経営に対する哲学・理念に、全社員を注目させ、社員が共鳴し、社員同志が、経営者と一緒になって、一つのコミュニケーションを作り始める。 鉄鋼販社のT社の経営者は 「当社は利益をあげることが目的ではなく、社員の成長である」 と日頃から言われて、企業文化づくりの目標をかかげている。 3つの委員会、8つのプロジェクトチームがあり、30名の社員が1年任期の委員会どれかに所属、複数のプロジェクトに女性も運転手もメンバーとなり、年2回の全社会議に発表し、経営陣や全員から活動の評価を受ける。 そして、これらの活動が経営に取り入れられている。 メンバーがこの自主的な推進の会議を営業や業務の口実で休むようなことがあると、「君は自分の成長ということを二の次にしているのか」と諭される。 朝礼や行事などで総務部長は黒子として支援はするが、委員会が総べて取り仕切る自主運営である。 常日頃から社員研修にもお金を投じて20年余になる。 「当社のブランドは社員とその活動である」と誇らしく言われるゆえんである。 土木会社のK社は、社員20名のとき、社長が単なる日雇い労務者の親方で終わりたくないと、日給から月給に切り替え、社員が感謝と喜びをもって働く会社にしたいと社長自ら率先垂範、先に与えることに勤め、隠れたところで凡事徹底、当たり前にキチンとこなして社員の心をつかんでいき、全員が社長に負けないように先に実践するという組織風土に変わってきた。 何より創意工夫を次々と考えだし、工事の短縮に取り組んだという。 雨で道路工事ができないときに給料が頂けるのはもったいないと社内で改善を生み出した。 K社の社長は思いきって社員に感謝したい、お客様に感謝したいと、自社の社名を○○建設工業から「カリス」、ギリシャ語で感謝、思いやりの意に変えられたのである。 こうした事例のように会社組織が発展していくためには、経営者の理念や価値観が社員に浸透し、組織的な行動がとれるような共通の価値観を身につけることが大事である。 このような状態を「好ましい組織風土(企業文化)の醸成」ができているという。
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(2004.8.16 長谷川好宏) | ||
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中小企業診断士 長谷川 好宏