顧客のロイヤリティを高める
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株式会社ウイズダムマネジメント 中小企業診断士 長谷川好宏 |
1. 既存顧客は、ロイヤル・ユーザーになっているか |
- あなたの企業の既存顧客は、あなた(自社)のどこを気に入って注文を続けてだしてくれているのか明確になっているだろうか。
- あなた(自社)は「既存顧客に売り込みが成功している」と思っておられるのではないか。売り手側に主導権があるのではない。既存顧客があなた(自社)を理由があって選んでいるだけである。たとえ、リピート・オーダーをくれているとしても、それは未来永久続くものではない。
- 既存顧客が存在する限り、お客様があなた(自社)を選んでくれる、気に入ってもらっているお客様は何社あるだろうか。それがロイヤル・ユーザーである。
- ロイヤル・ユーザーとは、あなた(自社)が好きで第一に選んでくれている既存顧客である。注文をしてくれている商品・サービスについては何でも相談を投げかけてくる。それだけでなく、機会があれば、知人や業者にあなた(自社)を選んでいることを自慢するお客様であり、あなた(自社)を紹介してくれるお客様である。
- あなた(自社)の既存顧客はそこまでのお客様にロイヤルティが高まっているだろうか。
- 「商品を売っている」のではない。顧客があなたの「商品を選んでくれている」のである。
- 「商品を売るという」という行為は、売る側に立った発想であり、顧客側に立った考え方ではない。顧客側に立てば、提供された商品・サービスが自分(自社)の要求に合っているから選択しているという行為にすぎない。顧客満足度を考える場合は、顧客側に自社の商品を選んで頂いたことになる。あるいは、売り手である自分を気に入って頂いたか、ないしは、信頼をして頂いたということである。
- ここで重要なことは、顧客が「あなた」という人物を気に入った。好意を寄せたというステージから「自社」という会社を選んでくれるステージまで高めていかなければならない。顧客が健在であるかぎり「あなた」ではなく、会社に好意をもって貰い、選んで頂くことが永続的に取引して頂くポイントである。
- 顧客の「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」という本質的なサービスの欲求は当たり前になっている。顧客が法人の場合、ある商品・サービスを調達するとき、何らかの意図があるはずである。顧客がある商品を購入したとき、本当はその商品に満足していない場合があるかもしれない。しかし、顧客である法人は別の意図するところがあり、調達する場合もある。その辺のことは、営業マンが欲求を聞き出し、察していくことが必要である。
- S社の場合:顧客A社はこの不景気に関わらず各地の新しいホテルや好立地の観光地にグッズ店を次々と開店し、その店舗設計と内装工事をS社は受注している。誠にありがたい顧客である。この顧客A社は東京が拠点で、以前は設計施工を都内の小規模な設計事務所に発注していた。しかし、グッズ販売が軌道にのり、都内から全国出店を戦略として決定したとき、第一店を岡山に、第二店を北海道に計画した。しかし、今まで依頼していた設計事務所では全国規模で継続した対応ができないことが分かった。
- そして顧客A社がS社に一個の特殊什器を見積依頼したときに、電話を受けた営業マンは、その初対応で相手企業の意図が全国展開にあることを悟り、単なる見積ではあるが、現場に来てほしいという要請を受け、岡山に急行したのである。顧客A社はS社の迅速な行動とそれ以後、営業マンだけでなく、事前打ち合わせには設備機械に詳しい工務マンも同行した。そして、図面前の仕様打ち合わせの段階で、設備仕様の決定に関して顧客に適切な助言ができた。顧客の出店マネージャーは設備に弱かったので、非常に喜んだ。それは社長に承認を得るための店舗仕様を説明するときに、なぜ、その設備を選んだかの返事が的確にできたからである。
後日談として、顧客A社のマネージャーが内装工事業S社に最初の電話をする前に、実は他の内装業X社に電話をかけて特殊什器の見積依頼をしていた。そのX社は岡山の現場までわざわざ行けないので図面をFAXしてくれるか、現物を送ってほしいと返答したそうである。1本の電話の応対で、顧客の意向を察したS社営業マンと、そうすることが建前としてできなかったX社との違いが出たのである。この顧客A社は今では、S社のロイヤル・ユーザーとして、毎年大口の契約を何店舗も出してくれているのである。
顧客は今日の変化の中で、自らの欲求が複雑で、かつ戦略的になっている。
複数の発注先を選ぶのでなく、自社の戦略を理解し、力を貸してくれるパートナーを求めているのである。そのような発注先は、自らの重要な戦略に関する情報も流してくれている。顧客は永続的な信頼の置ける取引先を求めているといってよい。
- 顧客が自社に満足してもらうように努力していくことは重要であるが、何か商品を購入して貰うときのサービスだけでなく、普段より、好ましい企業文化を会社のイメージとしてつくりあげていくことが重要である。S社は毎期の事業計画書の冒頭に、「顧客にとっても働き手にとっても魅力ある企業をめざす」と宣言している。また、営業マニュアルには、「信用の確保は利益の確保に優先します」と書かれており、さらに「目先の小さな利益のために、将来へと続く大きな信用を傷つけたり、失うことを私たちは何よりも恐れなければなりません。」と、うたっているのである。
- 営業マンの姿勢やマナーも重要なポイントであるが、顧客が信頼を置くのは、その企業の戦略ではないか。この企業なら自社の複雑なニーズに応えてくれるという期待である。そこから長期的なパートナーとして信頼関係が確立していくのである。
- 売る側の論理としては、販売やサービスは効果的効率主義に陥ることがある。すべての見込み客を自社の顧客にしょうという想いである。しかし、顧客のニーズはさまざまであり、すべてに対応しようとするときに、一人の顧客に不満足を与える結果になるのではないか。自社の取扱商品や販売姿勢を選んでくださるお客様と出会い、満足していただき、そこから深い信頼関係を築けるような営業をつづける。それは、常に顧客側にたった考え方、発想をしていくことである。
- 顧客が売り手側の自社に対して「感謝」してもらえるようなサービスをしていくことが顧客のロイヤリティを高める根元である。「えー、ここまでしてくれるの」という「感謝」の感動の場面をいくつも重ねていくことがやがて、顧客をロイヤルユーザーにしていくのである。
- T社は35名の生産財の問屋であるが、クレームが発生したとき、そのことを女子社員も含めて全員に伝える。すると、お客様からクレームの対応途上で、電話を取りついだ女子社員が「大変ご迷惑をおかけしております」とひと言付け加えることで、社内上げて対応してくれているという雰囲気がお客様に伝わるのである。
- 苦情やクレームのとき、また、返品処理をするときにその会社の姿勢がつぶさに出てくる。逆にいえば、そうしたときのマニュアルがきちんとできているか、社員の意識レベルが高められているかである。
既存顧客のロイヤルティを高められずして、中長期的な利益は確保できない。
顧客のロイヤリティが高まったときに、新しい顧客を紹介していただくことができる。
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