大手企業の方も技能・技術を保有する中小企業を求めています。小企業も新規開拓先として安定した大手企業の取引先を求めています。
ところがミスマッチになっているのが、特に小企業の品質管理の未熟さです。
中小工業A社との出会いは経営相談でした。圧縮成形という特殊なプラスチック成形工場の経営者でした。
相談内容は、流通商社を通して引き合いがあり、大手企業の鉄道車両事業からの見積りでした。
この見積りは通ったのですが、流通企業からの話では、注文をもらうには大手企業の品質管理部署による品質監査に合格しないとダメだということでした。
しかも、その品質監査項目(チェックリスト)の内容は、A社が品質監査を受けた経験もないので、どのような体制づくりをすればよいか、どのような文書を作成すればよいか等、流通商社の担当より説明を受けたのです。
その時に、提示されたのが、大手企業の品質監査時に準備しておかなければならない文書リストでした。品質文書だけ30種近いものでした。
自社では、スタッフが居るわけでもなく、経営者もそのような文書の仕組みをつくれないということでした。
中小工業A社は、大手企業の要求する製品を作る能力はあるので、相手は「図面通りの成形品を作ってもらいたい」のです。 しかし、A社は検査をすることはできますが、「品質管理の考え方」はできていませんでした。品質管理には、「製品の3条件」というのがあります。
価格、納期が満足しても、お客様にとって「品質」が一番大事なのです。しかも、お客様の先にはエンドユーザーがあり、そのお客様の満足度もあるのです。
それに相応しい品質であるかどうかが課題なのです。
大手企業の注文品は、品物が良いとなれば継続することが前提です。お客様の要求品質を最初のサンプルどおりに継続して作り出す「製造の仕組みがある」ことが大事なのです。
注文する側の大手企業は、この証拠が欲しいのです。
このための品質監査の基準を設定しており、品質監査は、評価基準があって、全項目にわたって所定の評価点数をとらなければ合格になりません。
このような品質監査は、文書だけでなく、実際の工場視察もあわせて行われます。このようなことをA社の経営者に説明をし、
貴社で大手企業の見積りにクリアする製品が作れることは、大手企業の要求する「品質管理の考え方」を正しく理解して最小限の文書で、品質を作り込むプロセスを明確にすれば、
大手企業の品質監査員に「この企業は、小さいけれど指導すれば品質管理の考え方」をもっており、将来に期待できる企業だという印象をもってもらえるのです。
A社の経営者は前向きで発展される要素があると直感しましたし、「どのように、大手企業に品質管理の考え方をアピールすればよいか」という質問でした。
それで会社の方向性として、品質方針を明確にして、内外にアピールすること、社内には、製造プロセス毎の手順の流れを示し、次のような目次の「品質マニュアル」の作成を奨めました。
この内容も書くことはできませんので、一緒に作成するために、筋書きを教えながら文書を作成してもらったのです。
1 | 品質管理の目的 | 7 | 受入検査要領 |
2 | 品質方針の宣言 | 8 | 不適合品の管理 |
3 | 適用範囲 | 9 | 材料および製品の保管管理要領 |
4 | 品質方針の実施手順 | 10 | 設備管理要領 |
5 | 品質目標 | 11 | 測定機器管理要領 |
6 | 文書管理の規定 | 12 | 製作工程管理要領 |
以上の項目で、1冊にすべての規定を盛り込むようにしました。ページ数は、10-20ページで良いのです。
長いのがよいわけではありません。シンプルで社内全員にわかりやすく実行しやすいのが第一番です。
この努力が稔り、大手鉄道車両メーカーから初受注品を獲得し、継続した受注が続いています。 これが契機となって、既存の他メーカからも注文数が増えて来ました。1年後には、従来の倍以上の仕事量になってきたのです。 人手も不足になりましたが、社内外の協力者がいて、途中採用者が充足できたのです。これは、品質管理の考え方が全員に徹底し、理解できたことによります。 当然、品質の作り込みの姿勢が変わってきた証拠です。A社の経営者は品質管理の中心の経営はコストを高めると誤った考え方であると悟りました。 むしろ、品質管理の考え方を中心にした経営が社員を含めて会社全体を変革したことに気づきました。 近い将来はISO9001を取得して、第三者にも自社のモノづくりと品質管理の考え方を認めてもらいたいと考えています。 (2011.7.30 長谷川 好宏)
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